建築思考整理

無責任と適当な感想

前歯欠損所感 20220623

前歯を2本折った。自転車で単独事故である。雨天下、夜。速度こそ大して乗っていなかったが、転倒した自転車は非情にも私の体を頭から放り出した。肌は、マスクが守ってくれた。何故か、顔以外は無傷だった。ただし、前歯が二本折れた。

永久歯ということばが、一瞬のうちに嘘になった。形あるものは、いつかなくなってしまう。当たり前のことを、こんなに強く実感したのはいつ以来か。

私がもしもイケメンだったら、この傷ついた顔にひどく落ち込むのだろう。一生ひとまえで笑顔を見せられないと、塞ぎ込んでしまうかもしれない。モデルでも俳優でもなく、常にマスクをしている世の中で、表面上私は傷ついていない。

ただ、一つ恐ろしいことがある。形あるものは、いつかなくなってしまうこと。今回の事故で指を失っていたら、私の建築の夢はたちまちのうちに崩れ去り、残るのは空虚のみである。

交通安全を説くのは簡単だ。だが実践は難しい。どんなに気を遣ったって、運が悪ければ歯は抜けるし、骨は折れるし、命はなくなってしまう。私の場合は建築だが、一つのことに命懸けで挑戦することの危うさを、怪我から学んだつもりでいる。

…………。

学科の人たち、部活の人たちに怪我の話をしたのは、みんなに同じ過ちをしてほしくないからと説明している。これは本心だが、今思えば一番の目的は構ってもらう、心配してもらうことだった気がする。表面上は冷静だったものの、ずっとあると思っていたものがたちまちのうちに無くなってしまった不安を、自ら引き出した心配でかき消したかったのだろう。こんな卑しい自分を反省しつつ、私を心配してくれた皆に、こんなところでも感謝の意を伝えさせていただきたい。